倉敷国際ホテルで遊ぶ【大原美術館の延長線上】

旅行にまつわる話
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倉敷の駅前を南に進むと左手にある倉敷国際ホテル。

昭和38年に建てられたホテルは「県外から訪れる人をもてなす場所」という大切な役割を背負う。

少し古びたホテルだけど高度成長期に差しかかった日本の繁栄を写したような設え。


ここにはかつて一度だけ宿泊しましたが、いつもはホテル内の喫茶やバー・レストランを利用する普段使い。

都会のホテルには到底およばないけど、美観地区を散策した後に立ち寄りたい場所です。

今回は午後のひとときを街の迎賓館、倉敷国際ホテルで遊ぶことにします。

未来のクラシックホテルの入り口

年始、大原美術館を訪れたあと。

すぐ近くの倉敷国際ホテルに立ち寄ります。


ゴーギャン、ロートレック、モディリアーニ、ピカソ、エル・グレコなど。

大原美術館で数々の名品を鑑賞した後はすこし休息が必要。

そんな時には倉敷国際ホテルが至便なのです。


木とガラスで作られたドア。

道路からホテルを隔てる緩やかな石段を少し上がるとエントランスです。


この時期ならではの門松が和洋の混ざり合う建築にとてもよく似合います。

道路を映すガラスはやや不揃いで、ほどよく油断した空気感を醸し出しています。


倉敷国際ホテルのロビー

ドアの向こう側は昭和期の良い空気が漂います。

わたしはよくこの場所を訪れて「美」に触れる時間を楽しみます。


倉敷市街の鳥瞰図。

「定礎 1963」とあります。


自動ドアーが開くと正面に大きな油絵。

北城貴子先生の作品が来訪者を迎えます。

大原美術館分館にも北城先生の作品がありますが、現在は休館中。

この場所に来ればいつでも見ることができる。


しかし美しい。余白は光。

どこまでも透き通る自然光を再現した絵画は見飽きない。

北城貴子先生の絵画はホテルを訪れる人を柔らかな光で包み込むように出迎えています。


いつか見たようなフロントの景色

すばらしい絵画による無言の歓迎を受けたのち、右手に進みます。

床は黒。

白い壁に木の組み合わせが倉敷の街並をイメージさせます。


こじんまりとしたフロント。

大きな石材を使ったカウンターも贅沢。

下の方に見える木製の細工にも美が宿ります。

この日は16時すぎでもチェックインはほとんどなく、ゆっくりとした空気が漂っています。


フロントの正面はロビー。

大きな備前焼の壺に賑やかなお花が生けてあります。

この奥には宴会場や喫茶。


ゆるい喫茶スペース the Gin

並ぶイスを縫って進むと喫茶。

美術館で観た名画の余韻に浸りながらメニューをながめてオーダー。

ホテルのコースターは古めかしい雰囲気で良。


この日は高梁で作られた高梁紅茶をいただきます。

小さなマカロンがおまけ。

器はたしか、ウェッジウッドだと思う。


紅茶やコーヒーのカップは日によって違う。

でもマカロンのお皿はいつも同じ。

上品なのでこれからもマカロンのお皿はこのデザインを続投してほしい。


良い器でいただく紅茶はおいしさも一入です。


一応ケーキセットもある。

凄腕パティシエはいないと思うけど、そこそこ美味しい。


ロビーの奥に作られた喫茶は正直なところ垢抜けない、いわば田舎の喫茶スペース。

広くない、華やかさもない、味も普通。

しかし、倉敷国際ホテルの喫茶なので許します。


サービスもやはり田舎の喫茶。

都会のホテルのサービスにはほど遠い素人感があふれます。

かと言って、それは「悪いこと」ではない。

普段使いにちょうど良いゆるやかなサービス。

ホテルの喫茶だからと緊張する必要もないし、フラッと立ち寄れるくらいのゆるさ。

ゆるさが倉敷らしくていいのです。


ホテルで芸術を楽しむ午後

喫茶スペースで少しくつろいだ後、ロビーあたりを見て回ります。

広くないロビーの壁に、いくつか絵画が飾ってあります。


わたしが最近気に入っているのは児島慎太郎先生の作品。

柔らかな色調で描かれた海外の風景。

陶器をベースとした照明、木製の机や椅子は長らくこのホテルに置いてあります。


現代作家の絵画がソッと掲げられているのも倉敷国際ホテルの楽しみ。

同じエリアには児島慎太郎先生の曽祖父にあたる児島虎次郎先生の絵画もあるのです。


一通り絵画を眺めて帰るとき、ロビーを見上げます。

倉敷国際ホテルのロビーは吹き抜け。

そこには棟方志功先生の大作が展示されています。

大原美術館東洋館で観た版画とは比較にならないスケール。

宿泊すれば2階、3階から眼前にこの作品を眺められるのです。


帰り際に見つける美飾

この日もいつも通りに「泊まることなく」帰ります。

フロントの前を通り玄関に向かう途中にも、視界に美しいものが入ってきます。


壁にかけられた古い時計。

おそらく開業当時からホテルの時間を刻んでいます。


入るときには気がつかなかった自動ドアー上部の造形。

ここを通過した人のごく一部しか、その美しさに気づいていないでしょう。


倉敷国際ホテルは来るたびに新しい美を見つけられる場所。

この街にずっとあるけれど、ゆるやかに変化する場所。

都会の華やかさはないけれど、わたしはこのホテルがお気に入りです。


願わくば、いつまでも続いてほしい。

やがてクラシックホテルと呼ばれ、街の人たちの大切な財産になってほしい。

そして何世代にもわたって人々の思い出話に登場するホテルであってほしい。

そんなことを考えつつ、コートを羽織ってドアーの向こうの現実世界に戻るのです。

倉敷の低い街並みには今日も倉敷国際ホテルが佇んでいます。



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この記事を書いた人

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