高輪の地
品川駅を降り、石垣をたどりながら木陰に囲まれた坂を登っていくと緑を見おろすホテルの構えがみえてきます。
壮大な庭園をかこむ建築群のひとつが、こちらのさくらタワーになります。
戦後軽井沢をはじめとした宮家の邸宅地に近代的なホテルが建てられたことが「プリンス」ホテルの名の由来と言われています。
金の網代
アプローチと木製の自動扉を抜けて館内にはいると、落ち着いたロビーに鎮座する黄金色の金物細工の門が出迎えます。
こちらのロビーとクラブラウンジのリニューアルはマンダリン東京・青山グランドホテルなど端正ながら挑戦的なデザインを手がけるA.N.D.小坂竜氏によるものです。
マリオットブランドのオートグラフコレクションにも加わったことで、日系ホテルでありながらもインターナショナルな客層でにぎわいます。
菓子とラウンジ
工芸品の並ぶ回廊にエントランスを構えるこちらのエグゼクティブラウンジも細やかで綺麗なつくりです。
コージーなリビング、バー、ラウンジと空間が小気味よく分節され並んでいます。TimeOutなど訪日客向けの情報誌も各種そろってます。
ティータイムでしたので定番のベルギークッキーのLotusとコーヒーをいただいたあと客室へ向かいます。
塔と桜
最上階14Fのエグゼクティブフロアにたどり着きます。
部屋に足を踏み入れると、しっとりしたトーンの客室に映える桜模様のカーペットと東京タワーの景色が出迎えます。
窓から見える景色も最上階からはさすがに違います。
初めて訪れてから7年足らずのうちにタワーを囲むビル群の様相も様変わりしています。
NIKKOやノリタケの優雅なカップなど調度品も他のフロアとの違いがあります。
バスアメニティはイタリアのACCA KAPPA。
ブロアバス、シャワーブース、セパレートトイレと45m2のなかに日本人・訪日客のいずれも快適に過ごせる工夫と気づかいがあります。
庭園散策
ひと息ついた後、緑豊かな庭園を歩きながら敷地に散らばるホテル群を散策します。
かっての宮家邸宅群の面影を感じながら、まずは村野藤吾の設計で初めてこの地に建てられたグランドプリンス高輪へ。
こちらもA.N.D.による日本の伝統意匠を主体とした落ち着いたリニューアルです。
特別フロアの花香路を訪ねます。
エレベーターをあがると突如都心の旅館空間が現れます。
近代的なホテルの中に日本建築のスケールがおさめられています。
近代と現代の匠
同じ敷地に庭園を挟んでそびえる、こちらも村野藤吾の設計によるグランドプリンス新高輪。
白亜のバルコニーが織りなす優雅なファサードが見えてきます。
なかに入るとビビッドな縁取りのロビーがあらわれます。
大胆で骨太なデザインながらも村野建築との見事なバランス感覚がうかがえます。
グランドプリンス新高輪のリニューアルはリッツ東京、FS大手町など名だたるラグジュアリーホテルを手がけるSTUDIO SPINによるデザインです。
高輪の夜
夜のラウンジを渡り歩きます。
こちらではさくらタワーと新高輪のエグゼクティブラウンジを交互に利用(ホッピング)することが可能です。
カクテルタイムはここで過ごすことにします。
光の門型がつなぐ連続した部屋のつくりが秀逸です。
照明もスタンドや壁面からのやわらかな間接光が主役となり、暗闇の中に親密な居場所を演出しています。
さくらタワーに戻ると、こちらのラウンジもまだ営業していたのでカヴァのロゼを一杯いただきました。
高輪の暗がりに比べ、こちらはコンテンポラリーでスマートな装いです。
部屋に戻り、夜の闇の中でその輪郭をさらに際立たせるタワーを望みながら眠りに着きます。
目覚めのくつろぎ
起床して光の差し込むスパのサウナと入浴で体をととのえたあと、朝食に向かいます。
開放感とレパートリーを重視してラウンジよりメインダイニングでいただくことにしました。
窓際のせせらぎを感じられる席で和朝食をいただきます。
帰り際ロビーを撮影していると、チェックアウト間際の来日客に写真を頼まれました。
スマホより一眼レフの方が国籍男女問わず声をかけられることが多いです。
そしてホテルをあとにし、また高輪の石垣をたどりながら帰路につきます。
緑豊かな邸宅地に建てられた近代建築が新進気鋭のデザイナーにより鮮やかにリニューアルされることで、さらなる歴史の深みがこの地に重ねられているようです。