家を買う時に考えなければならないものの一つに住宅ローンがあります。
住宅は人生の中で一番大きな買い物と言われており、多くのお金が必要となります。
家を買うお金をすべて現金で用意できる人は少数派。
ほとんどの人は住宅ローンを利用して資金を準備します。
では、一体どれくらいまでの金額なら住宅ローンを利用しても大丈夫なのでしょうか。
実際の「適正な水準」はわからない人も多いはず。
そこで今回は、マイホーム取得に欠かせない住宅ローンについて「住宅ローンが年収の何倍まで借りられるのか」を考えていきます。
住宅ローン借入額は「年収の5倍」が上限ではない
よく住宅ローンを借りる目安として使われるのが「住宅ローンは年収の5倍まで」という表現です。
住宅ローンの借入額が「年収の何倍までが適正か」は、その人の年収によって変わります。
なので、「年収の5倍まで」という言葉にとらわれる必要はありません。
「年収の5倍ならOK」という考え方は時代に合わない
かつては「年収の5倍ならOK」とされていた時代がありましたが、今では「年収に対して何倍ならOK」という乱暴な基準では判断できない時代。
というのも、「年収の5倍ならOK」とされていた時代は今から30年近く前のバブル末期。
当時の住宅ローン金利は今よりもずっと高く、住宅購入の時には頭金を準備して住宅ローンを利用するのが当たり前でした。
ちなみに平成の初め頃は住宅ローン金利は5%程度でした。
今では考えられないくらい高金利ですよね。
今から10年前の2009年1月の住宅ローン(フラット35)金利は2.88%でした。
それが現在では1.05%で利用可能です。
これほど金利に差が生まれると、住宅ローンの返済負担にも差が出てきます。
では、3000万円の住宅ローンを30年で借入した場合を例に、金利の違いが毎月返済金や総返済額にどの程度の差を生むのか確認してみましょう。
【金利2.88%の場合】
- 毎月返済額 11万4千円
- 総返済額 4,766万円
【金利1.05%の場合】
- 毎月返済額 8万6千円
- 総返済額 3,587万円
【金利2.88%】と【金利1.05%】で3,000万円借りて35年で返済する場合を計算してみると、借入金額が同じでも返済金額や総返済額が全く違うことがわかりますね。
金利が高ければ高いほど、利息負担が増えるため毎月返済金や総返済金額が多くなります。
年収600万円なら借入金額3,000万円が年収の5倍に相当します。
返済年数にもよりますが、年収600万円で毎月11万円以上の返済金を支払うと生活のゆとりはかなり減少すると思われます。
金利が高い時代には「住宅ローンは年収の5倍程度」に抑えておかないと、返済を続けることが困難になる可能性が高かったのです。
では、現在のように住宅ローンの金利が低い時代はどうでしょうか。
住宅ローンは金利が低ければ低いほど、大きな金額を借りやすくなります。
金利が低ければ毎月の返済金や総返済額も低く抑えられるため、借入金額が増えても負担が少ないことが要因です。
もし金利1.05%で35年返済の住宅ローンが利用できれば、毎月返済金額は11万4千円のままで借入金額は4,000万円まで増やすことができます。
年収600万円なら借入金額は年収の約6.7倍に相当します。
金利が大きく低下している現在の住宅ローンでは、昔のように「年収の5倍まで」という単純な基準では借入金額の目安を示すことができません。
年収倍率よりも重要なのは「返済する能力」
銀行でローンの審査をするときに重視されるのは「返済する能力」です。
「返済する能力」を見極めるには、年収がどの程度あって、毎年どれくらいのお金を返済していて、生活費がどれくらいかかって、自由に使えるお金がどれくらい残るかを想定していくことで判断するのが一般的です。
安定収入があることが絶対条件
生活の基礎になるのは会社からもらう給料です。
毎年いくらの給料をもらっているのか、源泉徴収票を見れば書いてあります。
会社から支給されたお給料は全額使えるわけではなく、社会保険料や厚生年金、所得税・住民税・雇用保険・財形貯蓄などが引かれた後で給与受取口座に振り込まれます。
手元に残って自由に使えるお金は支給額に比べてかなり圧縮されています。
「年功序列型の賃金体系」から「能力や成果を評価する賃金体系」になってしまった会社に努めている場合は必ずしも予定通りの給料が増えない事態に陥ることもあります。
若くて優秀な人材が年上の部下をもつケースは当たり前になっていますよね。
若くて優秀な人は年功序列型では決してもらえなかった給料をもらうことができる一方、年長者でも給料が伸び悩む人が発生します。
また、雇用形態も多様化しているため正社員が当たり前という時代でもありません。
パート社員やアルバイトと言った雇用形態となれば、年収は正社員と雲泥の差になってしまいます。
まさに給料は人それぞれです。
住宅ローンを利用するには、正社員として数年間の勤務実績があり収入が安定していることが大前提になります。
もちろん給料が多ければ住宅ローンの利用には有利に働きます。
「返済する能力」は、安定した収入が今後も確実に支払われるのか、また他のローン返済と合わせても無理のない返済金なのかを考慮し、過去の返済履歴も参考にしたうえで判定されます。
住宅ローンのように借入金額が大きく返済期間も長期になるローンでは、少なくとも年収400万円以上になってから利用を検討するのが得策です。
返済年数が短すぎるローンは返済条件が厳しくなる
住宅ローンは返済金額が大きく、返済年数も長期になる場合がほとんどです。
60歳までにローンを終わらせたい場合、25歳で住宅ローンを組めば35年返済が利用できます。
しかし、35歳で住宅ローンを組めば25年返済を利用することになります。
3,000万円を金利1.05%で借りた住宅ローンを35年で返済すれば毎月8万6千円の返済金を支払えばいい計算になります。
3,000万円を金利1.05%で借りた住宅ローンを25年で返済すると毎月11万4千円の返済金を支払う計算になります。
返済年数が10年短いだけで、毎月の返済金に3万円程度の差が生まれることがわかりますね。
一番大事なのは「返済比率」
ローンを利用したい人は「借りること」を最優先に考えます。
借りることを優先しすぎると、現実的な返済方法について深く考えることなく契約してしまうこともあります。
「年収は多少増えるだろうから、返済金額は多くても大丈夫」
「共働きだから返済期間は短くして早く返したい」
こんな話はよく耳にしますが、本当にそれでいいのでしょうか。
「年収は絶対に増えるんでしょうか」
「子どもが生まれても共働きでしょうか」
希望ばかりではなく、万が一思うとおりに行かなかったときのことも想定しておかなければなりません。
住宅ローンは「家を買うためのローン」です。
お金をかければ素晴らしい家を建てることができますから、ついつい住宅ローンの借入金額も上乗せしてしまいがちです。
一生に1度のお買い物と言われる住宅購入。
できるだけ良い家を購入したいと考えるのはとても自然なことです。
住宅購入を検討する人の多くは予算オーバーしてしまうのです。
予算オーバーしても潤沢な自己資金で対応できる場合は問題ありません。
しかし、借入を増やして対応する場合は注意が必要です。
借りたお金はどんなに苦しくても絶対に返済しなければなりません。
これから何十年も続く長い返済期間のことを想像しておくことが大事です。
生活費や教育費、自動車費や冠婚葬祭費なども想定しつつ、ゆとりある返済計画を維持できるかどうかを慎重に考えておく必要があります。
現在の年収に対して返済金がどれくらいの割合かを表す数字に「返済比率」というものがあります。
返済比率=年間の返済金額÷年収
車のローンやカードローン、クレジットカード等、あらゆるローンの年間返済金を年収で割ることで算出することができます。
もし、返済比率が30%を超えている人は要注意です。
高所得者でも「住宅ローンは年収の7倍」が理想的
年収が高ければ高いほど、借り入れ可能な金額は大きくなります。
年収に占める返済金の割合が大きくなっても、十分生活費を残すことが出来るからです。
逆に年収が低ければ低いほど、借り入れ可能な金額は小さくなります。
年収に占める返済金の割合が大きくなれば、生活費が残らないからです。
それを踏まえて、おおよそ「年収の何倍」かを示しておきたいと思います。
年収500万付近で借入可能額は変わる可能性大
「年収500万」を1つの境界線として考えておくとわかりやすいと思います。
ちなみに、とてつもない高所得者は住宅購入費の桁が違いますので考慮していません。
あくまでも一般的なサラリーマンの住宅取得の参考にしてください。
ちなみに、年収1,000万円になったからと言って購入する住宅の金額が年収500万の人の2倍になったりすることは極めて稀です。
東京都心の相場は高いですが、地方都市の住宅相場は土地付き新築物件で4,000万円から5,000万円くらいで考えておけばいいでしょう。
年収500万未満なら「年収の6倍」がギリギリ
年収の4倍から6倍に収めましょう。
借入額だと2000万円から3000万の間です。
年収が低くなればなるほど、上限は下がります。
年収300万円代前半の人は住宅購入自体を当面見合わせるか、中古物購入にとどめるなど計画を見直すことを強くおすすめします。
年収500万以上なら「年収の7倍」が精いっぱい
年収の5倍から7倍程度に収めましょう。
借入額だと2500万円から5000万円の間です。
年収が1,000万なら7,000万までいけるじゃないかと言われそうですが、年収1,000万程度だと所得税・住民税の負担が大きくなり実生活はそこまで豊かに感じられないものです。
年収が増えたからと言って高額な住宅ローンを組んでしまうと大きな負担を長期間強いられます。
慎重にも慎重を重ねて金額を決めることをおすすめします。