ふとしたタイミングで年末の箱根へ。
箱根には年に1度のペースで訪れますが、その都度拠点とする宿を変えることで異なる楽しみや発見があります。
今回は強羅エリアに建てられた公共の保養所を民間がリノベーションした「白檀」に滞在しました。
文字どおりの貴重な香木白檀をオーナー自身がモチーフとした、やすらぎに包まれた空間とサービスです。
香木の癒し

きわめて深い庇とそれにかかる暖簾をくぐり、雁行した回廊を進んで扉を開けると目の前に箱根の山々を望む扇形のロビーが現れます。
リノベーションによる現代化というよりは既存の白亜の建築のやさしさを拡張したような、柔らかいマユのようなあたたかい空気感です。


壁や床も粒状のテクスチャを配することで、それとなく縄文・土的な雰囲気を醸し出しています。
往年の名作家具がそのなかにチラホラと配されています。

窓際のテーブルでチェックインします。
ウェルカムドリンクの抹茶と季節のお茶菓子をいただきました。


ロビーではその他コーヒーや各種緑茶・紅茶、湯上がりのアイスなどをフリーでいただけます。
私的温泉

案内された2階の客室はダイナミックなロビーとはうって変わり、プライベート感あふれる隠れ家のような雰囲気です。

室内のスケールはそこそこながら、半屋外の温泉つきテラスを含めるとかなりの広さです。

お湯のあふれる石の湯船ごしに外の自然を眺めるだけで空間に広がりが生まれ、旅情と贅沢な気持ちをかきたてます。

シャワールームを経由してテラスに出るのは「ふふ」などにみられる個室温泉宿のスタイルで、日本独自のホテル文化でもあります。
冷蔵庫のドリンクはもちろんフリーで、コンパクトな白檀のお香を焚くための機器も備えてありました。
地下の大浴場はリニューアル中で使えなかったものの、ここだけでも十分箱根の湯を満喫できます。
夕暮れ

夕食までの束の間ラウンジでくつろぎます。
円弧状のラウンジのあちこちに多様なくつろぎのスペースが配されています。


改修で設けられた50cmの床段差が空間に抑揚と回遊性を与えています。
スタッフが直接薪で火をくべてくれる暖炉も今ではなかなかないのではないでしょうか。

夕食は1階の個室に案内されました。
程よいタイミングとリズムで全国の季節の幸が運ばれてきます。



その場ですりおろすワサビも自然の上質なもので変な辛さがありません。
お酒を飲みたいところでしたが、仕事のオンライン会議とかぶったため今回は控えました。
バータイム


夕食を終えラウンジに戻ると、カウンターがフリーフローのドリンクバーにセットされていました。
その手前にはノスタルジックな菓子の数々が文字通りスナックとして並べられています。
酒類もなかなかの銘柄がそろっていました。

ハイアット箱根もそうですが、このようなカクテルタイムは日本のリゾートでは主流になりつつあるのでしょうか。


部屋に戻り、闇夜に浮かぶ湯船に浸かったあと眠りにつきます。
贅沢に包まれる朝

目覚めると眼前に湯船と箱根の自然がある幸せです。

外の景色を楽しみながら入浴します。


ロビーではモーニングシャンパンのサービスが。
もちろんノンアルコールもそろってます。
注いだグラスをひとつ携えて朝食へ。

用意された料理は干しサバの炙りをはじめ豊富な品数とボリュームでしたが、釜の魚沼産コシヒカリとともにすべていただいてしまうほどの美味しさでした。
ショールーム


チェックアウト前、恒例のショールームで1階のロビーから直接アクセスするスイートルームを見学させていただきました。




100㎡近くの贅沢なつくりで、外のパーゴラつき露天風呂とテラスに開けたワイドな空間です。
ちょうど朝の日差しが入り込み、さながら光の墨絵を室内に落としていました。
森に埋もれる美術館

チェックアウト後、帰る間際に仙石原のポーラ美術館に寄ります。



箱根の厳しい景観規制を守るため地下に広げられた空間は、それとは思えないダイナミックさと自然との呼応をたたえています。

世界的なアーティスト、ロニ・ホーンの日本初の企画展と建築家、中山英之によるモネの新しい展示室を鑑賞してきました。

やはり建築や場所性とアートは密接な関係にあります。
そして東京方面へ。
都内でのスマートなホテルステイとは違い、遠方での自然に囲まれた宿泊はそこまでの経路や周辺での体験を含めひとつの「宿泊」なのだと、あらためて認識した今回の旅でした。
箱根は何百年も前から日本の気軽なハイダウェイです。
【滞在したホテル】