甲府は古くから重要な土地でした。
甲府と聞けば、多くの人が武田信玄を思い起こすでしょう。
その後の甲府はあまり知られていないのかもしれません。
江戸時代には甲府宰相の領地となり、柳沢家の領地となり、やがて天領となりました。
明治時代には擬洋風建築による文明開化がすこぶる進んだ土地でした。
さて、現在の甲府には品格のあるホテルが存在します。
今回は深尾先生が甲府の格式高いホテルに滞在しました。
都会から少し離れた都市の「美意識」をご堪能いただければ幸いです。
甲府の里の迎賓館
私がSNSで主催するホテルルームの常連様のご実家が山梨でホテルを運営されていると以前から聞いていました。
その方が旅行やホテルにかなりのこだわりを持っていることもあり、いつかご実家のホテルを訪れてみたいと思っていました。
ちょうど私の大きな仕事が終わったタイミングだったため、この機会に訪ねてみることにしました。
新宿からあずさ号に乗り、わずか2時間のショートトリップです。
トンネルを抜けると、果樹園と連峰に囲まれた甲府の地が目の前にあらわれました。
人里離れた迎賓館
駅に着いて図書館や気のきいたカフェを散策しましたが、チェックインまで時間があったため徒歩にてホテルに向かいます。
30分ほど奥地へ。
到着してロビーに入るなり、広大な庭園を望む圧巻のエントランスが開けていました。
意匠や調度品の上品さ。
造園のバランス感覚。
さすが皇族方の御利用や将棋の名人戦がおこなわれる[聖地]の威風です。
リブガラスの大開口やロングスパンのホールなど高度な建築技術がそれを支えていることも見てとれます。
奥から気骨ある雰囲気のオーナー社長、すなわち御父様がいらしてご挨拶を交わしました。
甲府の地にありながら、館内の至るところに京のエッセンスが散りばめられています。
モジュール(尺単位)も江戸間ではなく京間を採用してるのだとか。
大型建築のため、普通なら消防器具や標識などが目立ってしまうところをうまくデザインで和様の中に溶け込ませ、洗練された緊張感ある雰囲気を保っています。
和のリゾート客室
本日の客室は5階の富士山向きの角部屋をアサインいただきました。
一見伝統的なしつらえながらも徹底したディテールへのこだわりや書院の意匠の巧みな応用が見て取れます。
機能的でもありながらも緊張感ある和のラグジュアリー空間です。
想像していた、いわゆる温泉旅館ホテルのイメージとはまったく違うものです。
ロビー同様にファブリックのパターンにも上質なセンスが感じられます。冷蔵庫内のドリンクも当然フリーでした。
日式スパ・温泉
浴室エリアへ。
立派な温泉と露天風呂と広々としたリラクゼーション空間です。
ドリンクやアイスも2種類(ガリガリ君・ホームランバー)たっぷり常備されてました。
結局今回の滞在で3度こちらに通うことに。
屋敷庭園と夜の館内
豊かな植生と起伏に富んだ庭園をそぞろ歩きします。
映画やフィクションの世界でしか見ないような風雅な景色です。
池を望む離れでは本日の将棋の名人戦が準備されているとのこと。
階段や廊下、全ての箇所に手抜かりなく京の意匠が施されています。
いわゆる見過ごされた裏側というものがないようです。
オーナーの中ではこれらデザインも含めすべてが[サービス]とのこと。
甲州を頂く
ディナータイムは2階の個室で。
オーナーより甲府ワインの差し入れをいただきました。
甲州牛の握りや味噌焼き、きのこの炭火焼きなど贅沢な料理が続きます。
そしてシメはもちろん山梨のほうとうとシャインマスカットで。
あとは客室に戻って用意された布団にもぐると、すぐに寝入ってしまいました。
富士に挨拶
朝目を覚まして雨戸を開けると富士山が遠くに望めます。
朝食も彩りと立体感のあるプレゼンテーションです。
牛しぐれと煮豆腐が格別でした。
ロビーを散策し気になるところを撮影します。
建築デザイナーとしての視点で構図を切り取るため、それが意外と喜ばれることがあります。
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名残惜しいですが、チェックアウトしてふたたびあずさに乗りこみます。
東京以外のホテルはそれほど詳しくない私ですが、今回の旅で地方にはたくさんの隠れた[宝]があることに気づかされました。
ホテルを紹介いただいた常連様の建築と美術好きなバックグラウンドもうかがい知ることもできました。
地方のホテル旅は上質なものに出会えれば、交通費を加味しても都内よりリーズナブルでおすすめ、といえるのではないでしょうか。
【滞在したホテル】